街には、市街化区域と市街化調整区域、またはどちらにも分類されていない非線引き区域があります。
普段の生活では、この「区域区分」を気にすることはないでしょう。
しかし区域区分は、不動産を購入するときはもちろん日々の暮らしにも大きく関わる大切なことなのです。
これから不動産投資を始める人もすでに始めている人も、知っておいて損はありません!
この記事では、高卒宅建士のかっしーがわかりやすい言葉で区域区分について解説していきたいと思います。
区域区分とは
区域区分は、都市計画法によって各都道府県または国土交通大臣が指定します。
街をどのように整備してどのように発展させていくかを定めているのが、都市計画法です。
都市計画法で線引きした区域区分に基づいて街づくりをすることで、秩序を保ち土地を有効活用します。
市街化区域の特徴
市街化区域とは「都市化しよう!」と街の活性化を推し進めるエリアです。
おおよそ10年以内に優先的に、そして計画的に市街化しようとしている地域が市街化区域に設定されます。
人口や商業施設が多くすでに市街化している地域も、市街化区域です。
市街化区域の中でも、住居地域・商業地域・工業地域など細かくエリアが分けられています。
市街化調整区域の特徴
市街化区域とは反対に「都市化させないでおこう」と街の活性化を調整(=抑制)するエリアが、市街化調整区域です。
都市として発展させず自然のままにしておくことを目的としているため、商業施設はつくれません。
原則、住宅や道路、公園、学校もつくらないし、水道などのインフラも整える必要がないというスタンスです。
市街化調整区域の3つのメリット
市街化調整区域の不動産を買う場合、以下の3つのメリットがあります。
【市街化調整区域のメリット】
ひとつ順番に説明していきます。
土地を安く購入できる
市街化調整区域は、一般的な土地に比べて格段に安く購入できます。
埼玉県で市街化調整区域の土地を探してみたところ、深谷市で1坪あたり2.2万円の物件が見つかりました。
同じ深谷市で宅地を探したところ、1坪あたり5.2万円
家を建てるために30坪(約100m2)の土地を購入するとなったら、宅地は156万円に対して市街化調整区域の土地は66万円!
なんと宅地の半分以下の値段で買えることもあるんです。
市街化調整区域よりも税金が安い
市街化調整区域は、市街化区域に比べて固定資産税が安いこともメリットです。
固定資産税は、毎年1月1日の時点で不動産を所有している人に対して課税されます。
土地の固定資産税は、市区町村が決定した土地の課税標準(土地の評価額)をもとに算出して決定。地価が安い土地の方が課税標準も安くなります。
市街化調整区域は地価が安いので、固定資産税も安く済むということです。
市街化区域は、固定資産税とは別に街を発展させるための都市計画税が課税されますが、市街化調整区域はもちろん不要。
毎年払う税金の負担が少ないのは嬉しいポイントです。
自然が多く騒音が少ない
市街化を抑制している市街化調整区域。
大きな道路や施設がなく交通量も少ないので、騒音が少ないでしょう。
自然が多い場所で静かにゆったりと暮らしたい人にはぴったりなエリアです。
住宅や建物が密集していないので、市街化区域に比べて陽当りがいい土地も多くあります。
市街化調整区域のデメリット
ここまで市街化調整区域の良いところを紹介してきましたが、もちろんデメリットもあります。
【市街化調整区域のデメリット】
詳しく説明していきます。
商業施設がない
市街化調整区域は都市化しないようにしているエリアなので、商業施設をつくることはできません。
市街化調整区域で建築が認められているのは、農業などに使うための建物、例えばビニールハウスや貯蔵施設などです。
住宅であっても許可が必要になります。
生活に必要な公共施設や小さなお店なども許可を得れば建築できますが、利便性の高いエリアとはいえません。
購入も売却もしづらい
市街化調整区域に土地や家を買ったリフォームしたりする場合、住宅ローンの審査が通りにくい可能性があります。
土地の価格が安いことがメリットですが、ローンの担保としての価値も低いため、金融機関から融資をしてもらいづらいのです。
土地の地目(種類)が宅地ではなく農地の場合、さらに金融機関からの評価もローンが通る可能性も下がります。
つまり、市街化調整区域の不動産の購入を考えているならば、ある程度の自己資金が必要になるということです。
もしも市街化調整区域にある不動産を売却したいと思っても、ローンの審査が厳しいため売却にも時間がかかるでしょう。
家を建てるための手続きが面倒
市街化調整区域で住宅を建築する際の手続きは、手間がかかります。
自治体に申請して審査をしてもらい、建築許可を得なくてはいけません。
建築許可がおりてからも、面倒な手続きが必要になる可能性もあります。
市街化調整区域はガスや水道などのインフラが整っていない場所も多く、自分で工事の手配しなくてはいけません。
下水道がなければ浄化槽が必要になりますが、費用はもちろん自己負担です。
電気が通っていなければ電柱を建てる工事費用もかかります。
公道の近くなら水道・ガスは通っていたりしますが、よくよく確認した方がいいでしょう。
市街化調整区域に家を建てるには
市街化調整区域で住宅や商業施設を建てるには、建築許可が必要だと先述しました。
ひと口に市街化調整区域と言っても、自治体やどんな土地かによって規制や要件もさまざまです。
建築許可を得るための要件などは、土地を管轄している自治体の役所へ行き宅地開発課に問い合わせましょう。
また、農地に家を建てる場合は「農地転用」といって地目を宅地へ変更しなくてはいけません。
農地転用については農業委員会への問い合わせになります。
ちなみに家を新しく建てる場合だけでなく、リフォームや増築するのにも許可が必要になります。
ただし、農林漁業を営んでいる人が住むための住宅については、開発許可がなくても市街化調整区域内に建築可能です。
市街化調整区域の調べ方
市街化区域や市街化調整区域は役所で確認するか、インターネットでも調べられます。
「東京都文京区 都市計画」のように、地域名と都市計画をネット検索すれば、都市計画図が表示されるはずです。
しかし、見慣れていない人にとってはインターネットの情報は分かりづらいでしょう。
市街化区域か市街化調整区域なのか知りたいときは、役所に直接電話で問い合わせるか、不動産会社に聞くのがおすすめです。
市街化区域と市街化調整区域の違いまとめ
最後に、市街化区域と市街化調整区域の違いをまとめます。
・市街化区域は都市として発展させる(している)エリア
・市街化調整区域は土地や税金が安い
・市街化調整区域は自然が多い
・市街化調整区域は大きなお店や施設はない
・市街化調整区域で家を建てたリフォームする際には許可が必要
・市街化調整区域は住宅ローンを組みづらい
・市街化調整区域はインフラが整っていない
市街化調整区域の土地は安く購入できますが、土地としての評価が低いため住宅ローンがつきづらいことがデメリットです。
インフラが整っていない可能性が高い点にも注意が必要です。
逆に言うと、ある程度自己資金があって【子どもがいない・自宅で仕事ができる・仕事をしなくて良い】のいずれかに当てはまる人には、市街化調整区域はメリットの多い場所でもあります。
なんにせよ、市街化調整区域の土地や建物を買う際には不動産会社の話をよく聞いて、慎重に検討しましょう。
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